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あなた自身のストーリーが聞きたい「コミュニケーションのずれを直す」[ステップ3 情報を整理する]


 自分のカルテには、「気持ち」をえんえんと綴ってあっても困ると先日書きました。しかし、一方で、患者さんだからこそ語れる情報は、非常に大事だと私は考えています。

私はがん専門の大きな病院に勤めていますので、最初に患者さんに会うときは、たいてい前の医療機関からの紹介状なり情報提供があります。しかし、私は医師として基本的な医療情報がすべてわかっていたとしても、もう一回その患者さん自身から話を聞くようにしています。

患者さんによっては、私が病歴について聞くと、「カルテに書いてあります」という感じで繰り返すことを面倒がる方もいます。そのときは「私は、あなた自身のストーリー(物語)を聞きたいのです」と答えます。この、患者さんが病気を語る時間は、とても大切です。医療従事者は十分に時間をとる必要がありますし、患者は簡潔に語れることができないと損します。

話をよく聞くと、カルテの記載と患者さんの捕らえていることがかなり違うことがあります。中には、明らかに抗ガン剤は効いていないと記載されているのに、効いていると語る方もいます。あるいは薬の使用している理由が違う。こういう食い違いは、小さなものから大きなものまで、いろいろあるのですが、患者さんから丁寧に話を聞きことで、その原因を探ることができます。抗がん剤が効いていないということを、否定したい気持ちが強くあるのか、あるいは本当にそう信じているのか、あるいは医療関係者が説明をしていないのか。いずれが原因であるのかは、分からないことも多いのですが、「違いがある」ということに医療関係者が気付くことが良い医療への第一歩だと思います。次のステップでも書きますが、患者さんと医療者の治療の目的(ゴール)が食い違うことが、医療を受ける上で、一番不幸なことです。

治療のゴールを確認することは、普通あまり行われていません。しかし、完全な治療法が確立されていない病気の場合は、「完治する」というのがゴールにはなりえません。その場合、ほんとうは、医療者と患者さんの間で、何を目指して治療を行っていくのか、コンセンサスを得ておく必要があるのです。にもかかわらず、患者さん自身とそれまでの担当医の間で、病気や治療に関する見方がまったく違っている場合があることは、しばしばあります。

たとえばある患者さんが、転移性の乳がんあるいは大腸がんで、四回の違った化学療法を受けていたとします。医師は、使った薬の副作用の状態から薬を変える判断をしたのに、患者さんは病気が進行したから薬が変わったと思い込んでいるというような場合があります。このようなズレは、ほうっておくと重大な医療不信に繋がりかねません。

 このような場合、私は患者さんに「その件については、紹介元からはこのように聞いています」という話し方をして誤解を解くように努めます。同時に紹介元の医師にも、コミュニケーションのずれが生じていたことを、事実として率直に伝える必要があります。

 コミュニケーションのずれがあれば、それを埋めるところから新しいコミュニケーションは始まります。重大な間違いではなくても、ちょっとした感覚のずれ、互いの考え方の違いを知ることは、よい関係を作るために非常に大切なのです。コミュニケーションのずれが埋まることで、セカンドオピニオンをとりにきた患者さんが、ファーストオピニオンの医師のもとに安心して帰ることができるようになります。また、新しい医師のもとで治療を始める場合も、新しい治療への理解が十分にでき、より協力的に治療を進められることになります。しかもこれは単にセカンド・オピニオンだけでなく普段の主治医あるいはチームとのコミュニケーションにおいてコミュニケーションのずれを直すことが大切です。また、このずれが無いかを患者として振り返ることがとても大切です。

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プロフィール

チームオンコロジー(上野直人)

Author:チームオンコロジー(上野直人)
米国で腫瘍内科医をしています。日本のがん患者さんと医療従事者にMDアンダーソンがんセンターにおけるチーム医療をしってもらい、よりよく「がん」という病気に取り組んでほしいと思ってこのサイトをたちげました。

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