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患者満足度の低い日本のがん医療

世界トップクラスの医療技術を有しながら、患者の満足度が比較的低いと評される日本の医療。とりわけ、がん医療において不満が多いのは何故か。
「日本の医師は総じて優秀で熱意もあるが、それが質のよいがん医療につながっていない」と思う。

そこをつなげる一方法として患者参加型のチーム医療がある。日本においてがんのチーム医療(チームオンコロジー)を早期実現するには、患者の働きかけにかかっており、患者がキーを握っている。

確かにチーム医療という言葉の認知度は高まったのでしょう。だけど、その認知度ほどには実態が伴っているとは思えないのが今の現状である。
 チーム医療という言葉だけが独り歩きをして、様々な解釈がまかり通おり、日本としての統一見解がないのが懸念するのである。
実際、「チーム医療だったらうちでもとっくの昔からやっているよ」と答える医師に、しばしば出くわす。ところが内実は外科医で手に負えなくなったら内科医へ、あるいは放射線治療医へ受け渡すだけであったりする。チーム医療は引継ぎ医療、バトンタッチ医療とは違うし、医師だけで成立するものでもない。
 そもそも私が日本でのチーム医療の普及活動を思い立ったのは、6年前の来日の折、ショッキングな〃事件〃に遭遇したからである。
2000年、ある抗がん剤について日本人医師に向けての講演を依頼された。腫瘍内科医としての知識を見込まれたのだ。終了後、様々な医師らと話す機会を得て、どうも事前情報とは違いがあることに気付いた。
日本のがん医療、とくに抗がん剤療法は欧米に比べて20年遅れている、という例のまことしやかな話である。でも目の前の医師たちの知識は豊富で、世界的な標準療法についても詳しい。腫瘍内科医の専門医制度などをはじめとする日米の彼我についてもよく知っている。
「自分たちとは差がないではないか。いや、むしろ担っている役割の多さ、その良し悪しは別にして、責任感を持ちつつ、ほとんど一人でこなしているという点では、日本人医師の能力が総じて高いのではないか」
正直そう思った。
後にがん専門医でも医師によって大きな能力差があることにも気付くのだが、それより驚愕したのは知人を介して知り合った日本人患者たちの主体性のなさであった。
アメリカでがんの専門医になり、10年ぶりに日本人の患者に接してみると、自分のかかっている病気および病状について、そしてどんな治療を受けているかについて尋ねても、ほとんど理解していない。だから相談を受けても答えようがなかった。
外来を見学してその理由がわかった。医師と患者のコミュニケーションが満足にとれていないのは明らかだった。
「日米の差があるとすればここだ」と思った。日本の患者にはその点において決定的なフラストレーションがあって、たとえ世界標準の医療を受けてもそれさえわかっていないことが多く、別の面での不満が前面に出てしまうのではないか。質のよくない医療を受けても然りだ。医療の質の判断基準をろくに知らされていないから、つい医師の好感度などに目が行き、感情が優先してしまう。当然といえば当然だ。
 患者の主体性がない、ように見えるのは、引っ込み思案な国民性のせいだと思っていたが、実は「医師の言うことを聞いていればいいんだ」、という姿勢を押し付けてきた医療提供側の責任が大きいのではないか?。
患者参加型の医療とは何を言うのだろう。
日本の医療に慣れきってしまった私たちは、つい「チーム医療って、医療提供側の努力目標で、私たち患者には直接関係ないんじゃない?」
と思ってしまうのではないだろうか。
 だがこれが重大な間違いであるというのだ。
患者参加型の医療とは、一口で言えば患者さんが私たちのチームに率先して参加し、主体的に関わってリードしていただくことです。チームの目的は患者さんがどういう医療を受けたいか、ということに集約されます。それをかなえるためにチームは最善を尽くすのですから、患者さんが参加してくれなくては、本当のチーム医療は成立しないのです
こう言うと、インフォームドコンセントをしっかりして、治療ABCの中から、患者が選ぶ。それが患者参加型の医療だと誤解されがちだがそうではない。
現に「患者に選択肢を指し示し、さあどれにする、というのは、医師として無責任だ」とMDアンダーソンの医療を批判する医師が少なくない。
確かに一時期そういう時期がああった。でもそれでは患者さんの多くは悩むだけなんですね、医師はそれだと失格です。患者さんが気にかけているのは医療費や通院の都合など、実にさまざまです。ああでもないこうでもない、と話し合いながら、その中で患者さん自身が自分は何を求めているのか気付いていき、気付いたら私たちに返してくれればよいのです。それには患者さんと医療従事者の両者でパートナーシップを構築していくことが重要である。
私がたとえ話しで言うのは、患者さんはマラソン選手で、一回がんにかかると再発のこともあるし、治癒を目指して走り続けなければならない」ということです。
でも走るのもいろんな走り方がある。あれもこれもと情報に振り回される人はいずれ息切れする。当事者意識の薄い人はスローペースで、まったく走らない人もいる。それではいい医療を受ける機会を逸して損をしてしまう。ちょうどよいペースをとるには家族および医師や医療スタッフに伴奏者となってもうらうのがよい?。

がんなどの重い慢性疾患にかかったとき、みんな勘違いするのは医師をタクシーの運転手だと思ってしまうことです。運転手さん、ちゃんと走ってくださいよ、いい方向につれてってくださいよ、と思っている。そうじゃない。走るのは患者さん自身で、医師は伴奏者に過ぎないのです。
そこに気付いてチーム医療に自ら積極的に関わってくる人と、そうでない人では、受けられる医療の質が大きく違ってくることがあるのだという。

がんのサバイバー(長期生存者)を見ていると、やはり治療中は元気な人が多いのです。元気だと治療にいろんなオプションが出てくるのですね。元気であるためには、抗がん剤の副作用を最低減に抑えて食欲を維持する、食欲を維持できれば体力の低下を防げる、精神的にも塞ぎこんでばかりいないで散歩に出たり、人と会話したりしてストレスを発散させる、そういったことの積み重ねが必要で、理由があって元気が保てるのです。

もちろんそのサイクルのなかで医療チームがサポートできることはたくさんあって、そのサポートを受けるためには、患者と医療チームのコミュニケートが取れている必要がある。
だから患者参加型のチーム医療が必要である。

患者さんでも自らの働きかけで、今すぐ医療に自主的に関わり、チーム医療を成立させるチャンスはあると思う。   
9つのステップがある。
1、あわてずに自分の病気を知ろう
2、必要な情報を病院で集める
3、自分のカルテを自分で作る
4、質問上手になる
5、医師の話した内容を消化する
6、その治療は標準療法かどうかを確認する
7、ベストの治療法を決断する
8、自分の希望を伝える
9、恐れずチャレンジする
である。

チーム医療は、医師や医療従事者の優秀さ、よく整備されている医療基盤を見れば、米国より日本の方が広く根付く可能性があると思う。そうなれば、日本のがん患者さんの治療に対する満足度も飛躍的に上がるのは間違いない。


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エビデンスを作る努力

癌治療の前進にはエビデンスを作ることがとても大切だ。私たち癌に携わるものは少しでも医療が前進するために協力する必要がある。最近エビデンスに基づく医療のあり方ははき違えている諸氏がいる。

ひとつ、エビデンスが明確でなければ、自分で勝手に新しい治療を作っても良い。これ最悪ですね。世の中に少しも役立っていないです。新しい治療(新しい組み合わせ、適応、用量を減らすなら)、臨床試験を行う必要があります。臨床試験を行わなければ絶対に世の中には受け入れられません。つまり、ひとりよがりの治療です。エビデンスに忠実に出来ないなら、医療従事者をやめるか、臨床試験を行ってください。

ふたつ、エビデンスがないなら、お互いに話し合って治療のコンセンサスを決める必要があります。どれだけ時間がかかってもはなしあって決めていく必要があります。

みっつ、エビデンスを常に見直す努力をしてください。エビデンスの産出にはとても奥深い背景があります。そこにあらたな疑問が生まれ、医療の前進につながります。

プロフィール

チームオンコロジー(上野直人)

Author:チームオンコロジー(上野直人)
米国で腫瘍内科医をしています。日本のがん患者さんと医療従事者にMDアンダーソンがんセンターにおけるチーム医療をしってもらい、よりよく「がん」という病気に取り組んでほしいと思ってこのサイトをたちげました。

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