がんのチーム医療
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[ステップ6 その治療(最新治療)は標準療法か] 標準治療こそがすばらしい, 牛丼の並盛でない、特盛である。

現時点で信頼度の高いエビデンスがあるとされる治療は、非常に多くの患者さんにおいて、科学的な効果が確認されている信頼できる治療なのです。そして、そのようなエビデンスに基づいて組み立てられるのが標準治療 (Standard Therapy) です。

世界中どこへ行っても、それが確実に結果を出す治療であると専門家の誰もが認めているものです。決して一医師の経験や一病院の判断で行われているものではありません。

標準治療は、それを受けた人がどのような経過を経てどのような状態に導かれていくのか、どのような結果を出すのかということが、膨大なデータによってはっきりわかっています。どのような副作用が出る可能性があるのか、どれぐらい延命するのか、また効かない可能性がどれだけあって、どこでそれを判断するのか。そういう細かなことまでがきちんと予測できます。

いわゆる、ベネフィットとリスク(副作用)が明快にわかっている治療です。ですから、どんな場合も安心して薦めることができますし、患者さんにとっても一番安心できるということになります。治療の地図で言えば、誰もが通りやすいメインストリート。危険な箇所もすべてわかっていて、きちんと道路標識が整備された、目的地までの一番の近道ということができるでしょう。

標準治療は、誰が、どこでどのように定めるのでしょうか。たとえば、乳がんでいえば、おおきく3つのガイドラインがあります。NIH(米国立衛生研究所)が出すもの, ザンクトガレンの学会で毎年確認されるもの、NCCN(米国立がん研究所)が出すものです。このように標準療法のガイドライン作りをとっても数種類存在します。さらに、日本国内の事情を反映する意味で、日本乳癌学会でもガイドラインを作っています。しかもそれぞれのガイドラインは学会により中身が多少違います。ですので、一番大切なのはここの病院あるいは医師が自分の直面する医療現場でどのガイドラインを引用するかのコンセンサスをとることが一番大切なのかもしれません。

問題はstandard therapyの訳かも知れないですね。いかにも牛丼の並盛あるいは、お寿司の梅みたいに「標準」という言葉を印象を感じる人が多いのかも知れません。なんか良い訳ないんでしょうかね。本当は標準療法は松、特盛りなんですが。笑


  1. 2010/01/21(木) 10:02:01|
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[ステップ6 その治療(最新治療)は標準療法か] エビデンスを作るのは難しい


日日本では、これまで比較的小規模の臨床試験が行われてきました。例えばある薬が60人中40人に効果があったとしましょう。この薬はエビデンスがあると言えるでしょうか。

ある治療法が標準療法になるための臨床試験、ある薬が効果があるかどうかの臨床試験は、数十人という単位、一人の医師が一つの病院で行えるような規模ではありません。そういう臨床試験が世界中で行われて、何千人という単位になったときに初めてエビデンスとして認められるのです。今の臨床試験は何千人という単位で行われています。ですから、僕のいる病院では60人という単位は確立されたエビデンスとは言いきれません。でも何かのきっかけになるんのでとても重要な医療の前進のステップになると思います。また、非常に珍しい病気だと60人の経験でもとても重要になってきます。特に小児がんあるいは希な癌腫に関しては症例数が限られるためにエビデンスをどのように考慮するかは臨床医としての腕の見せどころかもしれません。

しかし、臨床試験を寄せ集めるのは、実はかなり難しいことです。同じ条件で試験を行い、同じ条件で効果を判定しなくてはいけません。そして、数を多く集めなくてはいけません。このため、アメリカで行われる臨床試験では、全国的に申し合わせて試験を行い、どのような試験がどの病院で行われるか、インターネットなどで情報が公開されます。日本でも臨床試験あるいは治験の情報開示が国民に求められると思います。


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  1. 2009/12/23(水) 06:34:30|
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自分の夢(ビジョン)に向かって

和歌山県立医科大学卒業、横須賀海軍病院を経て米国での臨床研修
僕自身は京都生まれで,小学校を米国,中学・高校を滋賀県で過ごした帰国子女。英語も日本語も中途半端なので,大学時代は英会話学校に通った。1989年和歌山県立医大卒業後第1内科(内分泌)に入局し,専門を絞りたくなく,横須賀米海軍病院で1年研修。そこでのDr. Churchとの出会いがきっかけとなり,ピッツバーグ大学で3年間一般内科研修を行うことになった。
横須賀での研修はすべて英語だったが,日本人研修医に対する配慮があった。しかしピッツバーグでは日本人への容赦は全くなく,一人の研修医としての仕事を期待された。横須賀での研修は米国のそれに近いものだったが, それでも1年目は大変で,3年間かなり苦労した。米国では例えば黒人には特有の表現があったり英語を上手に話せない患者もいたりして,患者の言葉が理解できないときは困ったという。内科研修終了後,1993年米国内科専門医を取得した。
内科研修の経験から腫瘍内科に興味を持ち,テキサス大学MDアンダーソンがんセンター(MDA)で腫瘍内科および骨髄移植を研修(3年間)。1996年腫瘍内科専門医を取得した。腫瘍内科フェローの傍ら,テキサス大学生物医学系大学院に入り腫瘍分子細胞学の研究に没頭する。1999年PhD 取得。現在はトリプルネガティブや炎症性乳がんなど転移しやすい乳がんの遺伝子変異や細胞伝達系の変化を見ることにより,がんの転移システムを解明し,転移抑制薬を開発すべく研究と臨床をしている。1998年MDA助教授,2003年同准教授。2009年教授。

がんのチーム医療を日本へ紹介
がん医療における日米の大きな差は,技術や薬剤の違いではなく,患者,特に末期患者の病状や治療に対する納得の度合いだと感じていた。そこで,2001年に日本がん治療学会に招かれた際,MDAでの診療方法=チーム医療(multidisciplinary care)を紹介。腫瘍内科、腫瘍外科・放射線・病理の各医師,看護師,薬剤師の6人がパネリストとして,乳がんの通常診療をケーススタディとして見せた。それまでチーム医療が同学会で討論されたことはなく,大きな反響を得た。
これをきっかけに,患者中心のがんのチーム医療を日本に広めるため,日本で年1回,医師,看護師,薬剤師各20人を対象に,『チームオンコロジー』と命名した3日間のワークショップを開催している。また,毎年このなかから6人がMDAで5週間のトレーニングを受講。現在42人になった同トレーニング終了者が日本で指導を行っている。これらの活動の補強として,ウエブサイトも設置。さらに,聖路加国際病院,慶応大学と姉妹提携し,医師,看護師,薬剤師12人を対象に,MDAで2日間のワークショップも実施している。

振り返ってみると
卒業して20年たって、内科教授までなったが、自分の様々な失敗と成功を考えると三つ思いつくことがある。これから医師になる人たちあるいはこれから医師として自分を高める事を考えている人へのアドバイスに少しでもなればと思う。

1.最初はいろいろ経験する
最初から専門を絞らず,いろいろ経験してジェネラリストを目指す。時間をかけて良い医師になるのが大切。みんな焦りすぎ、良い専門家になるには最低10年かかる。

2.よいメンターを見つけ,自分もよいメンターになる
私には5人のメンター,MDAのDr. Gabriel N. Hortobagyi, Dr. Richard E.Champlin, Dr. Mien-Chie Hung, 横須賀海軍病院のDr. Preston Church,和歌山県立医科大学の南條輝志男先生(現学長)がいて,長年にわたりMentor-menteeの良好な関係を保っている。一方で,メンティも数多く抱えている。よいメンティおよびメンターになるにはその心構えが大事。つまり人の世話を常にし、ビジョンを共有し、後輩のビジョンを育てること。後輩が伸びるれば、仲間として大切にすること。つまりメンティーシップとはメンティの職業かつ人格の発展を助けるために,メンターが賢明かつ信頼の高い助言を与える長期の関係である。
メンティは心を開いて自分の夢や目標,問題点などを正直に伝える。助言や指導を受容する態度を持つ。積極的に考えを述べたり質問したりする。短期・中期・長期のキャリアプランを立て,一生懸命に努力する。進展状況をタイムリーにフィードバックする。
メンターは模範となり、自分の持てる能力のすべてを使って教育・指導を行う。長期にわたり建設的な助言や情報を与える。現実的な期待を持って激励する。
両者ともに共通の目標を持ち,お互いに尊敬・尊重し合って,良好な関係を保つ努力をする。正しい行いをする。お互いに守秘義務がある。

3.将来のビジョンや夢を持つ
 近年日本での『医療崩壊』という言葉の流行を危惧している。医療従事者はそれを理由に努力を怠ってはいけない。現在この言葉をなくすため,対がん協会と協力してがんドリームチームキャンペーンを展開準備中。夢を描きどんな状況の仕事にも夢や長期展望を持って,問題点を明確にし,周囲と対話・協力しながら前向きに改善努力を続けること,倫理に基づき正しい行いをすることが重要。ゴールを持っている医師は多いが10年後のビジョンを描ける人は少ない。


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  1. 2009/12/06(日) 06:47:21|
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[ステップ6 その治療(最新治療)は標準療法か] あなたの治療のエビデンスレベル?

エビデンス(直訳:証拠)という言葉を何度か使ってきましたが、皆さんはエビデンスとはどういうものだと思っていますか? エビデンスという言葉を見聞きするようになって、まだ10年に満たないと思います。書籍や雑誌の中では見かけるけれど、実際の診療の場面で患者と医師との会話の中で使われることもまだ稀でしょう。エビデンスとは日本語では「科学的根拠」などと訳されることが多いようです。

ではその実態はどうか、なにをもって「科学的根拠」というかということになると、あいまいであることも多いものです。エビデンスにもいろいろあって、それが医療の現場でどれぐらいの信頼性を持っているかによってレベルが違ってきます。

 エビデンスは大きく分けて、四段階に分けられます。
・信頼度1 は無作為に選んだ患者さん大勢に参加してもらった複数の臨床試験の論文やデータを集めて検討した結果です。

・信頼度2 症例対照研究。無作為でない二つのグループの患者さんの治療結果を比較する(昔に比べれば…というのも、この中に入ります)あるいは比較しなくても一定の信頼できる結果を出し。大奥の専門家がその結果に対して納得できる。

・信頼度3 患者調査。比較試験はしないが、きちんとした計画に基づいて臨床試験を行ったもの。(私の経験によれば…。というのがこれにあたります)

・信頼度4 専門家委員会や権威者の意見、症例報告
(効いた!治った!というレベルです)何故効いたかよくわからない、でも効いた。あるいはもっともらしい説明をつけているが、科学的根拠がない。


 信頼度1がエビデンスとしては一番信頼できるものです。そこから順に信頼性は下がっていきます。ですから、エビデンスがあるかどうかということの次に、「どのレベルのエビデンスなのか」ということも重要になってきます。一度医師に聞いてみてください、じたばたしたらおもしろいかも知れないです。笑
あるいは、じたばたしないで、ふんぞり返るかも知れないですね。俺のやり方でついてこいーーーーーーーーーーーー。

 科学的といっても、医療に関しては、「ネズミで行った試験で」とか「培養した細胞で行った試験で」という場合には、臨床的にエビデンスがあるとはいいません。培養細胞やネズミで行う実験は、人間に行う実験のはるかに前の段階の研究です。大切なものではあっても、培養細胞やネズミで出た結果は、人間には当てはめられないのです。あくまでも人間で行った臨床試験や治療による結果でなければ、信頼度はゼロだということを覚えておいてください。

また、人間に対して行われたことの結果であればよいかというと、それだけではエビデンスになりません。たとえば、患者さんが「これが効いた」という体験談を書き、それを複数集めてあったとしても、それは何の判断の根拠にもなりません。公平にその結果を判断する手段が講じられていませんし、その治療をした患者さんの背景がどうだったのか、どれぐらいの人数がその治療を行ったのか、そのうち何人に効いたのか、何をもって効いたと判断するのかもわからないものだからです。エビデンスレベルの高いものは、これらがすべて明らかにされています。

あなたの受けている治療のエビデンスレベルは何番ですか?
一度、先生に聞いてみてください。笑


  1. 2009/11/23(月) 06:43:04|
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[ステップ6 その治療(最新治療)は標準療法か]

標準療法というのは最大多数の人が確実に延命する治療法です。日欧米で、各学会ごとに毎年の総会などで、「この病気の一番いい治療法はこれだよ」というガイドラインが設けられます。学会に勉強に来た医師はそれに基づいて治療を行います。アメリカでは、国が様々ながんについて、ガイドラインを設けていて、病院ではそのガイドラインに基づいた治療が行われるようになっています。この標準治療は、全ての人に最大限の効果を生むという確実な保障はできませんが、少なくとも、いちばんよい確率で、一番よい結果を生む可能性がある治療だといえます。日本でも多くの学会でガイドラインを作りを行っており、これをいかに一般病院で定着させるかが今後の課題かもしれません。

これに対して最新治療は、新しい治療法、最近効果があるかもしれないと試され始めた、もしくはその治療法で効いた人がいたという可能性である治療法が多いです。新治療が標準になるには、必ず臨床試験が行われなければなりません。

ですから、最新治療の情報は、情報としては非常におもしろいのですが、自分に使える治療法なのかという問題とは別に考えなくてはいけません。母の録画してくれた番組のディレクターはそのことに気づいていないようでした。

例えば、新しい治療法としてよく紹介される放射線治療に、重量子線治療、陽子線治療があります。高額で大規模な設備を必要としますので、現在非常に限られた一部の施設でしか受けることができない治療です。もちろん保険もききません。こういった治療、じゃあ、全国どこにいても、場合によっては海外からでも必ず飛びつかなければならないような治療かといったら、そんなことはありません。

我々の病院(MDアンダーソンがんセンター)でも設備を作っていますが、現時点ではそちらを標準療法にするというよりは、標準療法の中に組み込んでどういう実績を作っていこうかという段階です。標準療法になる可能性はあるけれど、今はまだ限られたエビデンス(有効な治療だという科学的な根拠)だという状況です。

日本で、「これが最新治療だ」という報道がなされるときに、それが標準療法として認められているかどうかに触れないことが多いです。ですから、最新治療の情報を得たら、まず、自分でそれが標準治療とどのような関係にあるのかを調べなくてはいけません。インターネットで調べる、患者会に問い合わせる、ドクターに聞くこともできます。

自分の治療を決める際に、とにかくまず、世界的に標準となっている治療がどういうものなのかを調べてください。次に、その標準をさらに効果的にするために自分はどうすべきなのかをドクターに相談すべきです。そうすれば医師は「こういう最新治療があるんですよ」とかこういう臨床試験がありますという情報を出してくれるでしょう。

医師の方から最新治療の話をされたら、それが標準療法になっているのか、臨床試験がすでに行われているのか、新しすぎてまだ何もわかっていないのかその辺の位置関係をはっきりさせなくてはいけません。

最近では、日本からも40代以下の若手の先生たちが積極的に海外に出かけていって、世界的な学会で示される標準治療のガイドラインを勉強して来ています。また、こういった勉強家の医師たちは、インターネットを使って、その情報を常に最新のものに更新する努力を続けています。日本でも、乳がん、胃がんなどの学界で、世界の標準療法を取り入れたり、日本での標準療法を示そうという試みがなされています。新しい治療に飛びつく前に、あなたが医師に確認することは、「標準療法は何か」ということなのです。


テーマ:医療・病気・治療 - ジャンル:心と身体

  1. 2009/11/09(月) 10:17:09|
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